2010年10月27日(水)10時13分
樹齢115年のソメイヨシノ
(写真は青森県観光情報アプティネットより提供 360度パノラマ写真)
大名庭園サミットでお話しされた香川樹木医会会長川西玉夫さんの「樹木の保全」「景観の保全」についてです。
(ちょっとかたい話しです、ご興味のあるかただけどうぞ。)
「樹木自体の保全」と「景観の保全」についての川西玉夫さんのお話です。
「樹木自体の保全」については実際にあった実例を挙げて詳しく説明をしてくれました。
ソメイヨシノは樹齢60年と言われており、ヤマザクラなどに比べると老木の数が大変少ないとのことです。
しかし、青森県弘前市にある弘前城跡公園に樹齢100年以上のソメイヨシノが存在するそうです。
青森と言えば「りんご」ですよね。(突然話しが変わったと思いましたか?実は・・・)
その「りんご」の剪定管理をサクラに行ったところ、樹勢が回復したそうです。
昔から「サクラ切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがあります。
これは梅は管理上「剪定しないとダメだよ」、と言う意味で巷で言われているようにサクラは「ほったらかしで良い」という意味ではないのですが、やはりサクラに対して強剪定はあまり行われてこなかったようです。
しかし、青森では思い切った剪定(りんごの剪定管理)をすることによって、次の年に新しい若い芽が出てきて樹勢が回復し、樹齢も延びているようです。
また、土壌についても話がありました。
サクラの下の土壌を調べたところ、大変やわらかかったそうです。
剪定管理と土壌の両方がマッチして青森のソメイヨシノは長生きをしている、という話しでした。
これがどういった事を意味するのか、時間が無かったため説明はなかったのですが、自分で調べてみました。
キーワードは「土壌の踏圧」です。
まずサクラは比較的土壌の浅いところに根を張ります。それだけなら何も問題が無いのですが、サクラは花見の時期になると人が沢山花を見ようとやってきます。
その結果、根元を足で踏み固めてしまう踏圧害が起きてしまいます。
踏圧害が起きるとどうなるのでしょうか?
①固い土壌になってしまい、根が十分に呼吸できない。
②新たらしい根を張ることができない。
③保水力が低下する
④微生物の活動が弱くなる(保肥力の低下)
⑤踏圧によって傷ついた根の根頭がん腫病などの病気の発症
などが考えられます(すいません、これ↑このはなさくや図鑑さんからほぼ引用です)。
花見の名所となっているところの大半はソメイヨシノが多く、これも樹齢を短くしている原因の一つで、土壌がやわらかく、十分に根が成長できる環境だと長生きできるのだと川西さんは言いたかったのだと思います。
冒頭の写真は弘前市城跡公園のソメイヨシノの写真ですが、周りを柵で囲ってあり、根元まで人が行く事はできません。このような樹木に対する配慮と適切な管理が一般的な樹齢より長生きさせる秘訣なんでしょうね。
こういったこと(個々の樹木に対する適切な管理、環境の整備)を勉強し、実践するのが「樹木自体の保全」だというお話しでした。
次に「景観の保全」について。
「景観の保全」については玉藻公園で実際に行っていることについて、引き続きソメイヨシノを例にして話をしてくれました。
ソメイヨシノは大変きれいですが、病害虫に弱いという欠点があります。「てんぐ巣病」です。
簡単に説明すると、枝の一部がこぶ状にふくらんで大きくなり、小枝がほうき状に伸びる病気のことです。
放置しておくと、周りの健康な枝にも伝播し、樹木全体に広がります。
花見の名所だとソメイヨシノが並んで植えられている事が多いので、隣の樹木にも病気が伝播していき、結果多大な被害を受けるのです。
「景観の保全」を考えた場合、病気に弱いソメイヨシノではなく、地元に自生しているソメイヨシノに似た「ヤマザクラ」に切り替えるのが良いのではないか、という意見でした。
増田教授も「ソメイヨシノではなくヤマザクラだと教えてもらわないと分からないぐらいだった」と言っておりました。
開花時期が多少早いようですが、花もそれほど変わらず、病害虫に強いのであれば、「景観を保全」していくにはソメイヨシノより手間も費用も掛からず、良いことだと思います。
「樹木自体を保全」することにより「景観の保全」も保たれそうな気がしますが、その地域に合わない、病害虫に弱い、暑さや寒さに弱い、といった樹木を保全するのは手間も費用も掛かります。
結果、管理が行き届かなかったり、費用が掛かる為定期的な管理が出来なくなる可能性があります。
それでは、景観を保全することが出来ない(又は大変)なので、地域に、環境にあった樹木に切り替えることが結果として良いことになるのではないでしょうか?というお話しでした。
私が携わるのは主に個人の住宅ですので「景観の保全」ということまで考える必要性はないのですが、環境に合った樹木であればお施主様の管理する手間も軽減されるわけで、やはり樹木や草花について植生を深く知る必要があることを再認識しました。が、本を読んで知識を増やしてもダメで実際に事例や経験を積まないといけないので、焦らず、しかし、常にそのことを念頭においてこれから植物と係わって行きたいです。
こういったことに気付かせてくれた講演に感謝です。
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