2018年07月21日(土)06時45分
3年前に工事をさせていただいたI様から門塀の塗り壁に亀裂が入っている、と連絡があり見に行ってきました。
I様の担当をしたのは私ではなく別のスタッフだったのですが、基本的には全ての物件の設計、見積りの内容は確認して把握しており、また門塀に「漆喰」を塗った(通常はアイカ工業のジョリパットです)珍しい現場だったので尚更記憶に残っておりました。
着いて門塀を見ると確かに足元の漆喰が見るからにおかしい状況で、右下の角は漆喰が剥がれ落ちています。
裏側を見るとさらに状況は悪く、完全にボロボロと漆喰が剝れてしまっています。
地面から30㎝程度高い位置にある小窓の下側にも亀裂が…。
という事で今回はアフターフォローと塗装のお話です。
さて、まずは奥様にいつぐらいから、どのような感じで、とお話を聞いてみると、施工後1年前後ぐらいでうっすらヒビが入ってきたそうです。その時点で問い合わせを弊社にして担当スタッフが現地を確認しました。その時はいわゆる「ヘアークラック」と呼ばれる表面上の細かいヒビで材料の特性上どうしても発生してしまうものです、という説明を受けたそうです。
「ヘアークラック」というのは一般的に幅0.3㎜以下、深さ4㎜以下のヒビ割れのことで、主に乾燥による収縮や熱による膨張などによってコンクリートやモルタル、塗装の表面で起きる現象です。
そのまましばらく様子を見ていると段々ヒビが大きくなり、触ると漆喰が剝れたりしたそうです。一回見てもらったし、自然現象(収縮や膨張)で起きるのならしょうがないのか、と思っていたそうですが、剝れてくる範囲が広がり、角や裏側がボロボロ剝れ落ちてきたので、再度連絡をした、ということでした。
お話を聞きながら状況を見て原因が何かと考えると思い当たるのはただ一つ。漆喰とモルタル下地の間に何らかの原因で水が入り、それが剥離の原因になっているのだと思いました。
普段塗り壁に使っているアイカ工業のジョリパットは施工上の注意としてこんな表記(注意喚起)があります。
右下の赤枠の中を見てください。
一番最後の文章で、『「原則的には」地上より30㎝以上離して施工してください。また花壇など直接土と接する場所には施工しないでください』と書いてあります。
メーカーとしては地上より30㎝以下に塗っているもの、花壇など土と接している場合に塗装が剥離しても責任は負いませんよ、ということです。
では例えば門塀にジョリパットを塗るときにコンクリ-トの基礎が30㎝もあったらどうなのか?
この写真の足元に見えるとコンクリート基礎は10㎝弱ぐらいです。
この3倍の面積(3個ある小窓の一番下辺りまで)でグレー色のコンクリート基礎があって、その上にジョリパットを塗っていたらどうでしょうか…。見た目、アンバランスでかっこ悪いですよね^^;
なので、インターネットで塗り壁、門塀、と検索しても施工例で30㎝の基礎が見える門塀はほとんどないと思います(道路と敷地に高低差があり、土留めを兼ねている場合はのぞきます)。それどころかほとんどの写真が地面ギリギリ(正確には10㎝ぐらい土の中に塗りこんでいる)まで塗装していると思います。
私個人としては最初に勤めた会社が地面の中までジョリパットを塗り込むやり方をしていたので、何の疑いもなく同じ方法で塗装をしていましたが、数年前にこの水回りの処理についての注意に気づいてからはコンクリート基礎を10㎝ぐらい地上にだして、出来るだけジョリパットが地面から離れるような施工に変えました。
じゃあ、今まで(早いものでこの業界に入って18年が経過してます^^;)地面の中にジョリパットを塗り込んだ現場はどうなってるんだ?と思った時に今回のI様邸のように塗装が剝れた、という連絡(クレーム)を受けたことがないのです。東京で務めていた会社の連絡がくるわけないので、香川に帰ってからスウィートガーデンとして施工して10年。塗装が剝れたというのは初めてでした。
この現場では表は地面の中まで塗り込み、裏側は40cmぐらい花壇の土が入っています。2枚目の写真は施工後3年経っていますが、塗装にはクラック、浮き、剥離など全くありません。
ここまではジョリパットの話しなので「漆喰」とどうなんだ?と思って当時施工してくれた(今も弊社の左官仕事してくれてます)職人さんに聞くと「漆喰でも今まで地面の中に塗りこんでやってきているけど今まで剥離したのは聞いたことがない」ということでした。
ふーむ、明らかに原因は水が隙間に入って漆喰が剥離した、というので間違いはないのですが、施工から3年経った今、アフターで対応すべきなのかどうなのか判断に迷うところです。
一応、社内的には塗り壁は1年間の保証をみているのですが、すでに3年経っている…。
うーん、うーん、と頭を悩ませた結果、今回はアフター対応として無償で塗り替えることにしました。
奥様の話を振り返ってみると施工後1年目辺りで最初の兆候が出ており(具体的には目にしていないのでどの程度のクラックだったか分からないが)、それが原因で今回の剥離につながっているのであれば、やはり施工当時の何らからの原因があったと考えるべきかな、と判断しました。
塗り替えることは決まりましたが、今度は施工方法です。
先にも書きましたが今まで地面の中に塗装を塗りこんでも剝れたことがないのですが、今回は実際に塗装が剝れてしまっているので、同じ方法を取るわけにはいきません。少なくとも塗装面は地面から離してあげる必要があります。
職人と相談した結果、塗装の浮いているところは全て剥がして、下地のモルタルを一度全面に塗って、さらに地面から10~15㎝ぐらいはもう一度モルタルを塗って厚みを出し、コンクリート基礎のように見せることにしました。
漆喰を剥がしてみると、水の吸い上げた跡がある下の方はバラバラポロポロと漆喰が剝れましたが、それより上は漆喰がガチガチで剥がすことができませんでした。なので、ガチガチの漆喰はそのまま残し、グラスファイバーメッシュという通常の門塀の塗り施工ではあまり使わないものを使ってクラック防止対策も行いました(建物外壁や広い面積はよく使われています)。
で、写真は無いですが、下の方だけ基礎風にもう一度モルタルを塗って、上部をジョリパットで塗りました。
おお、いい感じじゃないか、と思っていたら奥様から一言、「下のグレーの部分は塗らないんですか?」と…。
「いや、その部分を塗ると前回と同じで塗装面が地面の中に入ってしまい、同じように剥離の原因になるかもしれないから、今回は地面から離しているんですよ」と説明したのですが、どーしてもツートンカラーに見えるのが気になってどうにかしたい、というお話に。
左官屋さんが施工する前に一度方法を説明したのですが、それは現場が少し遠い場所になるのでタイミング的にI様とお会いできずに、結局電話だけでの説明でした。私としては伝わっている、と思ったのですが、やはりそれは現場に携わっている人間だから理解できることであって、お客様に電話だけで説明をしてなかなか理解は出来ませんよね…。これは完全に私の失敗でした。
じゃあどうしましょうか、と忙しいなか早めに仕事を切りあげて帰ってきてくれたご主人も交えて、現場であーでもない、こーでもないと3人で激論!朝まで生討論、の勢いだったのですが、20時近くなり真っ暗になってきたので結論を出すことにしました。
①ツートンカラーは無しで、全面ジョリパットにしたい
②今回のI様を除き、私が担当した今までの現場で地面までジョリパットを塗りこんでも剥離したことはない(連絡がないだけで実際にはそう言った事例もあるのかもしれないが…)
③弊社としてはアフターフォローで対応する以上、同じことが起きないように今回の施工方法(ジョリパットを地面から離す)を推奨。
④地面まで塗り込むことで今回の同じように塗装面の剥離が起きてもそれについては弊社のアフター対象外とする。
⑤基礎部分を再度塗装する費用は弊社が負担する
ということになりました。
この話がついてから梅雨に入ってしまったので、しばらく何もできなかったのですが、あの長雨が終わって晴れ間が続き、また今後1週間も雨予報がないので一昨日塗装をしてきました。
下側の部分はコンクリート基礎風に見せるためジョリパットより5㎜程ふかしてモルタルを塗っていたので、よーく見ると微妙な段差が見えるのですが、言われなければ気づかない程度の段差だと思います。また、元々の仕上げ方法が横にコテ跡を残すパターンだったのも幸いしました。丁度段差が付いているところにコテ跡を残すことで違和感なく仕上がりました。
この仕上がりに奥様も納得していただき、ようやくアフターフォローが終わりました^^;
普通なら3年前の施工に対してここまですることはないのかもしれませんが、まあその辺りは状況と話を聞いてみての判断になりますかね。最近弊社が出している広告などによく書いていますが「作ったら終わり、ではなく作ってから本当のお付き合いの始まり」というモットーなので、他社とは違う施工後も安心して付き合っていける、相談していける会社にしていきたいですね。
あ、そうそう。なんで塗り直しが「漆喰」ではなく「ジョリパット」なのか、というと最初にI様と話しているときに、
「建物の外壁も漆喰なんですか?」と私が聞いたら
「いやジョリパットですよ」という回答で、
「え!?、何で門塀だけ漆喰にしたんですか?」と聞いたら、
「新築したころは知識がなくて、壁を塗っているのは全て漆喰だと思っていてTさん(退社したスタッフ)にお願いしたんです」
というお話でした^^;
そしてそして、最後になりますが、今回漆喰が剝れた原因についても。
上に書きましたが、門塀の上部に塗られていた漆喰はガチガチでそれはジョリパットよりも表面は堅く、とても衝撃などで剝れるようなものではありませんでした。
では、なぜ今回剝れたのかいろいろ考えていたのですが、工事しながら分かったのですが、この分譲地全体なんですが、とても水はけが悪い土地でした。雨が降って水たまりが出来ると2~3日は残るような土地でした。なので、門塀周りに水が集まり常に湿気(というか水)にさらされていた、というのがまず一つ。
もう一つは施工時期が真冬(12月~1月初め)だったのですが、漆喰を塗った時に今回剥離した辺りで漆喰に含まれている水分が凍結したのではないか、という考えも。
水分が凍ると体積が増えるのですが、それが溶けると体積が減り、微細な隙間が出来ます。そこに下から吸い上げた水が入り、また凍結をする、溶ける、凍結、溶ける、凍結…これを3年かけて繰り返して、段々範囲が広がっていったのかもしれません。
私が担当していたのではないので、塗装した日の天気やその後の気温などが分からないので何ともいえませんが、ここら辺が原因かな~と思っています。
今回I様にはご迷惑をお掛けしましたが、同じことを繰り返さないように、よりよい方法を常に考えていきたいと思います!